Q&A 地主さんのよくあるお悩み
底地のいろは
- Q.1借地借家法と借地法との違いは何ですか。
-
現在の「借地借家法」が施行されたのが、平成4年8月1日です。それまでは、「借地法」と言われる法律でした。
元々、「借地法」は借地人さんを保護する目的で作られた法律といわれ、地主さんにはとても厳しい法律でした。
(現在の借地借家法も厳しいですけどね・・・)
大きく変わったところといえば、やはり契約期間です。契約最初の契約期間と法定更新のみならず、定期借地権というものもできました。(図1参照)
また、借地上の建物が朽廃または滅失した場合なども変更されました。
「貸した土地は永久的に返ってこない」と言われていますが、地主さんにとって定期借地権ができたのは、うれしい限りですよね!借地法で締結している契約についてはそのままですが・・・
- Q.2地上権と賃借権の違いは何ですか。
-
借地権と呼ばれる権利には、賃借権と地上権の2種類がありますが、一般的には賃借権がほとんどです。
- Q.【賃借権】
- 賃借権は「債権」で、地主さんの承諾なしに借地権の登記、譲渡、転貸などができません。
- Q.【地上権】
- 地上権は「物権」で、地主さんの承諾なしでも借地権の登記、譲渡、転貸などが自由にできます。
- Q.3借地契約の種類にはどのようなものがありますか。
-
借地法
H4.8.1.より前に
契約種別 最低期間 法定更新 備考 堅固建物の所有目的
(石造、土造、煉瓦造等)原則60年 30年 期間の間に建物が朽廃すると借地権は消滅する 非堅固建物の所有目的
(その他建物)原則30年 20年 平成4年8月1日(※)
借地借家法
H4.8.1.以降に
契約種別 最低期間 更新
1回目更新2回目以降 備考 普通借地権 原則30年以上 20年 10年 建物が朽廃しても借地権は消滅しない 事業用定期借地権
(非居住用建物)10年以上
50年未満更新無し 更新無し 公正証書での契約が必要 一般定期借地権 原則50年以上 更新無し 更新無し 公正証書等での書面による契約が必要 建物譲渡特約付借地権 原則30年以上 更新無し 更新無し 書面による契約は決められていない 【重要】
※平成4年8月1日より前に契約締結されていれば旧借地法が適用され、それ以降または今後の新規契約であれば借地借家法が適用されます。
図1
- Q.4賃貸借契約締結後に地主が負わなければならない義務はあるのでしょうか。
-
地主さんは、土地を借地人さんに引き渡した後も、しっかりと面倒を見なければなりません。
例えば、借地に崖崩れや地盤沈下などで借地人さんが土地をまともに使えなくなった場合、修繕をしなければなりません。
また、その費用を借地人さんが支払った場合、地主さんはその費用を借地人さんに支払わなければなりません。
- Q.5賃貸借契約締結後に発生する借地人さんの義務はどのようなものですか。また、借地契約終了時には借地人さんの義務はどのようなものがありますか。
-
賃貸借契約は地主さんが目的物の使用および収益を借地人さんに約束し、借地人さんがこれに対して賃料を支払うことを約束する契約です。借地人さんには目的物を使用収益させてもらう権利がありますが、さまざまな義務も発生します。
- 1.「賃料支払義務」
- 説明の必要なしですよね!当然、目的物を貸しているのですからその対価は、支払ってもらわなければなりません。
- 2.「善管注意義務」
- 借地人さんは、その目的物を使用収益するにあたり、善良なる管理者としての注意義務をもって管理しなければなりません。
- 3.「用法遵守義務」
- 借地人さんは、目的物に応じた使用方法で使用収益をしなければなりません。借地の場合は使用方法などの制限を賃貸借契約で定めておくのがよいでしょう。
- 4.「目的物返還義務」
- 借地人さんは、賃貸借契約が終了した場合には、その目的物を原状回復して地主さんに返還する義務があります。原則、借地の場合は更地に戻して返す必要がありますが、借地人さんから「建物買取請求権」を行使される場合があります。(契約期間・契約更新・契約解除No.13、No.14参照)
- 5.「その他、賃貸借契約で定められた特約」
- 1~4までは、基本的な借地人さんの義務ですが、これとは別に賃貸借契約で定めた特約がある場合には、この特約を守る義務があります。
金銭の授受
地代の相場・増減
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Q.1適正な地代は決まっていますか。
また、地代の相場などなどはありますか。 -
基本的に地代は、地主さんと借地人さんで取り決めることになり、法律で特に決められているものではありません。しかし、地主さんにとって、地代は生活するうえでの収入源となるので少しでも高く・・・と思いがちですが、あまり高い地代を設定すると「いつまでたっても借り手がなかな見つからない。」なんてことになりかねません。そこで、一般的によく使われるのは地主さんが支払う税金を元に考える計算方法です。
(固定資産税+都市計画税)×3~5倍÷12ヶ月=1ヶ月の地代
上記の計算はあくまでも、地主さんが簡易に求めることができる目安なのでよく使われていますが、不動産鑑定士や裁判の中では「賃貸事例比較法」「収益分析法」「スライド方式」などを比較して適正賃料を決めます。
- Q.2近隣の地代が上がっており、近隣と比較すると安い状態になっていることがわかりました。同額程度まで地代を上げることはできますか。
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土地の税金や地価の増額が相当ある場合は、地代の増額を借地人さんに請求でします。しかし、その額がそのまま認められるというのは難しいと思われます。
(継続賃料となりますので、地代の大幅アップはあまり期待できないかもしれません・・・)
地主さんにとっては大事な収入源ですが、借地人さんにとっては、生活費からの支出ですのでお互いの利益がぶつかることとなります。そこで増額の合意が取れなければ、調停で解決します。それでも合意できなければ裁判でガチンコ勝負です!
裁判が確定するまでの間、借地人さんは地代の支払いについては「相当の額と認める地代」(要は今まで通りの額を払えばよい)となっていますが、地主さんとしては当然受け取ることを拒みますので、借地人さんは法務局に供託することになります。
めでたく裁判で増額が確定した時には、地代の増額を提起した日に遡って、借地人さんから地代の不足分と年1割の利息を加えて頂戴することになります。
また、地代の減額の場合は立場が逆になると考えてよいでしょう。
- Q.3借地人さんから増改築の申し入れがあった場合や、借地権譲渡の申し入れがあった場合など、何らかの変更がある場合は、それを機に地代を上げることはできますか。
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この場合、借地契約の中に増改築禁止の特約があるかないかで変わります。
増改築禁止特約がない場合なら、借地人さんは増改築をやり放題で、増改築を理由としての地代の値上げはできません。しかし、増改築禁止特約があれば話は別です。なぜなら、増改築禁止特約あることで、地代を比較的安くしている場合があります。このような場合、承諾する代わりに地代の増額を条件に出しても、おかしな話ではないと思われますので根気強く協議に挑みましょう。
また、地代の話し合いがまとまらなければ裁判所のお世話になることになりますが、借地人さんは地主さんの代わりに裁判所から増改築の許可をもらえることがあります。裁判所は許可を出す代わりに借地契約の見直しや財産上の給付(平たく言えば承諾料)を借地人さんに言い渡すことがあります。
- Q.4物価の下落や土地の評価替えにより固定資産税が下がりました。地代を下げる必要があるのでしょうか。
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支払う税金や物価の下落が理由で、必ずしも地主さんから地代を下げなければならないということはありません。
しかし、地主さんから地代の減額をすると、増額する時は借地人さんも反論しにくいですね!
- Q.5近隣で予定されていた大規模公共事業が中止になったことから、借地人さんから地代を下げるよう申し入れがあったのですが、地代を下げなければいけないのでしょうか。
-
この工事の中止が原因で、借地の地価や税金の支払い額が下がってしまい、現在の地代が不相当であるとすれば地代を下げなければならない場合もあるでしょう。
(そんなケースは稀でしょうけど・・・)
しかし、工事が中止されても地価の変動や税金の支払い額などが変わっていなければ下げる必要もないですよね。借地人さんがこの工事を期待して借地契約をしたとすれば、借地人さんの見る目が無かっただけの話ではないでしょうか。
- Q.6地代を上げるための手続きがわかりません。地主として何をしなければいけないのでしょうか。
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順番に並べます!
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①借地人さんに地代の値上げを提示します。この時、必ず書面で行い、根拠のある数字を理由として事情を記載します。
根拠の資料として、評価証明書や不動産鑑定をお願いして鑑定評価書を根拠として話し合いをするとよいでしょう。 -
②交渉が決裂すると、まずはもう一度、内容証明郵便で値上げの通知書を送ります(裁判での証拠資料となります)。
そして調停を行うことになり、ここでは調停委員が間に入り双方の言い分を聞き、和解をすすめてくれます。 -
③しかし、調停も不調に終われば、賃料増額訴訟となり裁判で決着をつける方法があります。
けれど、できるなら穏便に済ませたいですよね!ガチンコ勝負になる前に専門家にご相談されることをおすすめします。
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①借地人さんに地代の値上げを提示します。この時、必ず書面で行い、根拠のある数字を理由として事情を記載します。
- Q.7賃貸借契約時に将来の地代の値上げについて定めておきたいのですができますか。
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結論から述べますと、可能です。
しかし、この特約を結んでいたとしても、いざ値上げする時にその値上げが周辺の地代の相場から見て異常に高い、あるいは土地価格の下落や税金支払い額の減額がある場合には難しいと考えます。
-
Q.8土地賃貸借契約の名義人と地代支払の名義人が異なっています。この契約は有効ですか。
有効な場合は、地代滞納時の請求先はどちらになりますか。 -
大きく2種類のケースが考えられます。
1つ目のケースは、相続が発生して借地人さん名義と地代の支払い名義が違う場合です。借地権は相続できますし、地主さんの承諾は必要ありません。よってこの場合の地代滞納の請求先は地代の支払い名義人と考えられます。
2つ目のケースとして地主さんの承諾無しに、無断で借地権を譲渡した場合です。これは、大きな問題となりますので、どっちにしろ借地人さんに問い合わせし、事情を聴く必要があると思われます。
承諾料・更新料
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Q.9地主として何をする時に承諾料を請求できますか。
またその承諾料は、必ず支払いを受ける権利はありますか。
借地人さんから支払い拒否された場合は、どのような対応を取ることができますか。 -
まずは、承諾料をご説明しますね。承諾料に関しては法的根拠はありません。ですので、必ず承諾料を請求できるかというと、そうではありません。
借地権を第三者に譲渡したり、建物を建て替えたりする場合には地主さんの承諾が必要で、これは法律によって定められています。しかし、この際に承諾料が請求できるとの決まりはありません。よって、借地人さんから支払いを拒否される場合もあります。
では、一般的に言われる承諾料は何なのでしょうか?結論から言えば、これは慣習です。
理由として考えられるのが、借地人さんが変わると地主さんはその人がどんな人かもわかりません。建て替えにしても旧借地法での借地契約なら建物が朽廃しないと借地は返ってこない場合が多いのです。そこで、地主さんが借地権の譲渡や建物の建て替えを承諾しないと、借地人さんは裁判所に行き、地主さんの承諾に代わる許可をもらうことができます。
(一定の要件は必要ですが・・・)
その場合、裁判所は双方の事情を考えますから、借地人さんに許可を出す代わりに地主さんに対して金銭を支払うように命じることがあります。
それでは結局、借地人さんからすれば時間と裁判費用をかけて、地主さんに金銭を支払うのであれば時間と費用のムダですよね。また、地主さんとの関係も悪くなりますので、それなら最初から承諾料を払って円満に済ませたほうがよいと考えられてきたと思われます。
また、承諾料の額ですが、地域によって考え方にかなり差があるようですので、前もって専門家にご相談されたらよいでしょう。
-
Q.10どのような場合に更新料を請求できますか。
借地人さんから支払い拒否された場合は、どのような対応を取ることができますか。 -
更新料についてですが、これも承諾料と同じく、法的根拠はなく慣習です。(No.9参照)したがって、法律に則って請求はできません。しかし、借地契約で更新料についてお互いの合意があれば請求できます。
ですが、地主さんからしたら少額の地代で土地を貸し、更新料や承諾料で補填している場合もあるでしょう。このことをしっかり借地人さんに説明する必要がありますよね。
地代の滞納
- Q.11借地人さんが地代を滞納しています。どのような対応を取ることができますか。
-
この質問が出てくるということは、すでに何回か地代の請求をしているものと思われます。そこで、次の手ですが内容証明にて督促をするということです。この時に支払いの催告に加えて支払に対して相当の期間を与えることも忘れずに記載しましょう。内容証明で督促する理由は、裁判になった場合に地代の請求をしていた証拠となります。
それでも地代が支払われなければ、訴訟を起こし判決のうえ、財産差し押さえをしたいところですが、これには費用も時間もかかります。
他の方法としては、「支払督促」という方法があります。これは簡易裁判所の書記官が相手方に金銭の支払いを命じる制度です。
まず、簡易裁判所に申し立てをすると裁判所書記官がその内容を審査し、相手方の言い分を聞かないで金銭の支払いを命じる「支払督促」を発付します。発付された支払督促を送っても相手方がお金を支払わず、異議申立てもしない場合は申立人は支払督促に対して仮執行宣言を発付してもらい、強制執行を申し立てることができます。
これは、裁判所に納める手数料が、訴訟の半分になりますし、通常の裁判よりも時間も手間も少なく済むのがうれしいですね!
また、滞納期間および滞納回数によっては契約解除も考えられますので、あまりにもひどい借地人さんの場合は専門家に相談して、立ち退いてもらいましょう!
- Q.12地代が1ヶ月滞納されたため、借地契約を解除したいのですができますか。
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地主さんの気持ちはわかります。
しかし、1ヶ月だけの滞納では地主さんと借地人さんの信頼関係が壊れたとは認められないと思います。
契約を解除する場合には、相当の期間を決めて催告し、それでも地代の支払いがない場合に認められると思われます。
また、契約書に「地代の滞納が1ヶ月でもあれば契約を解除できる」と条文に記載してあったとしても裁判になれば認めてもらえない可能性が高いでしょう。
- Q.13地代が滞納されているので取り立てを行いたいのですが、どうすればいいですか。
-
この質問が出てくるということは、すでに何回か地代の請求をしているものと思われます。そこで、次の手ですが内容証明にて督促をするということです。この時に支払いの催告に加えて支払に対して相当の期間を与えることも忘れずに記載しましょう。内容証明で督促する理由は、裁判になった場合に地代の請求をしていた証拠となります。
それでも地代が支払わなければ、訴訟を起こし判決のうえ、財産差し押さえをしたいところですが、これには費用も時間もかかります。
他の方法としては、「支払督促」という方法があります。これは簡易裁判所の書記官が相手方に金銭の支払いを命じる制度です。
まず、簡易裁判所に申し立てをすると裁判所書記官がその内容を審査し、相手方の言い分を聞かないで金銭の支払いを命じる「支払督促」を発付します。発付された支払督促を送っても相手方がお金を支払わず、異議申立てもしない場合は申立人は支払督促に対して仮執行宣言を発付してもらい、強制執行を申し立てることができます。
これは、裁判所に納める手数料が、訴訟の半分になりますし、通常の裁判よりも時間も手間も少なく済むのがうれしいですね!
また、滞納期間および滞納回数によっては契約解除も考えられますので、あまりにもひどい借地人さんの場合は専門家に相談して、立ち退いてもらいましょう!
- Q.14地代の滞納による督促や催告に対して、期限内に支払いはなく、期限後に支払われました。この場合、借地契約は解除できますか。
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解除についてですが、原則として借地人さんに「相当の期間を決めて支払いを催告し、その期間内に地代の支払いが無ければ解除しますよ」と、しっかり伝えておかなければなりません。(内容証明で意思表示!)
借地人さんにそのことを伝えるまでに地代が支払われたら解除はできません。
しかし、借地人さんに解除の意思を伝えた後に、地代が支払われたのであれば解除の効力が発生すると考えます。ただし、支払の期間が相当であるかは微妙なところです。裁判になり、支払いの期間が十分でないと判断されれば、地主さんと借地人さんとの信頼関係が壊されたと認めてもらえず、解除も認めてもらえない可能性が高いでしょう。
- Q.15地代の滞納に対して、借地人さんから敷金からの充当を申し入れされました。拒否できますか。
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即刻、拒否してください!
借地人さんから地代滞納分を敷金から差し引く申し入れはできません。なぜなら、敷金は契約終了時に精算されるものであるからです。ですから、地代を支払うことができなければ相当な支払期間を設けてしっかり意思表示して、それでも地代の支払いが無ければ契約解除を考えましょう。(No.11、No.14参照)
- Q.16地代が滞納された場合、借地人さんの財産を差し押さえることはできますか。
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この質問が出てくるということは、すでに何回か地代の請求をしているものと思われます。そこで、次の手ですが内容証明にて督促をするということです。この時に支払いの催告に加えて支払に対して相当の期間を与えることも忘れずに記載しましょう。内容証明で督促する理由は、裁判になった場合に地代の請求をしていた証拠となります。
それでも地代が支払われなければ、訴訟を起こし判決のうえ、財産差し押さえをしたいところですが、これには費用も時間もかかります。
他の方法としては、「支払督促」という方法があります。これは簡易裁判所の書記官が相手方に金銭の支払いを命じる制度です。
まず、簡易裁判所に申し立てをすると裁判所書記官がその内容を審査し、相手方の言い分を聞かないで金銭の支払いを命じる「支払督促」を発付します。発付された支払督促を送っても相手方がお金を支払わず、異議申立てもしない場合は申立人は支払督促に対して仮執行宣言を発付してもらい、強制執行を申し立てることができます。
これは、裁判所に納める手数料が、訴訟の半分になりますし、通常の裁判よりも時間も手間も少なく済むのがうれしいですね!
また、滞納期間および滞納回数によっては契約解除も考えられますので、あまりにもひどい借地人さんの場合は専門家に相談して、立ち退いてもらいましょう!
-
Q.17
地代債権には、他の一般債権とは異なる権利が認められるというのは本当ですか。
認められている場合、それはどのような権利ですか。 -
なんと、地代債権には「先取特権」なるものが与えられているのです。
これは、借地人さんの一定の財産に効力があり、例えば他の債権者に先立って地主さんの地代債権の弁済を受けることができます。
地主さんにはうれしい権利ですね♪
敷金・保証金
- Q.18借地を購入したのですが、借地人さんが旧所有者に預けた敷金は、誰が返すことになるのですか。
-
原則として、敷金の返還債務は新地主さんに引き継がれます。よって、借地人さんから預かっていた敷金は新地主さんから借地人さんに返さなければなりません。
また、たとえ旧地主さんから新地主さんに預かっていた敷金が引き渡されていなくても新地主さんが返さなければなりませんので、借地を購入される時は敷金についてしっかり取り決めをしておきましょう。
- Q.19借地上に建物を所有している借地人さんが建物を譲渡するというので、地主として譲渡について承諾をしました。敷金は誰に返せばよいのですか。
-
原則、旧借地人さんに返します。
ですが、それでは地主さんからしたら敷金が無くなってしますので、建物譲渡の承諾条件として新借地人に敷金を入れてもらうことを条件としたらよいでしょう。
契約期間・契約更新・契約解除
契約期間・終了
- Q.1借地契約の期間について、詳しく教えてください。
-
借地法
H4.8.1.より前に
契約種別 最低期間 法定更新 備考 堅固建物の所有目的
(石造、土造、煉瓦造等)原則60年 30年 期間の間に建物が朽廃すると借地権は消滅する 非堅固建物の所有目的
(その他建物)原則30年 20年 平成4年8月1日(※)
借地借家法
H4.8.1.以降に
契約種別 最低期間 更新
1回目更新2回目以降 備考 普通借地権 原則30年以上 20年 10年 建物が朽廃しても借地権は消滅しない 事業用定期借地権
(非居住用建物)10年以上
50年未満更新無し 更新無し 公正証書での契約が必要 一般定期借地権 原則50年以上 更新無し 更新無し 公正証書等での書面による契約が必要 建物譲渡特約付借地権 原則30年以上 更新無し 更新無し 書面による契約は決められていない 【重要】
※平成4年8月1日より前に契約締結されていれば旧借地法が適用され、それ以降または今後の新規契約であれば借地借家法が適用されます。
図1
- Q.2借地契約の期間の途中に、借地人さんから解約を申し入れられましたが、応じる義務はあるのですか。逆に、地主の方から解約を申し入れることはできますか。
-
原則、契約期間中の解約はできません。
しかし、契約の中で借地人さんからの中途解約ができる旨の特約を定めていれば可能です。
また、地主さんからの中途解約の申し入れは、お互いの合意でのみ解約することができますが、借地人さんが合意しなければ合意解約とならず、期間の途中で解約することはできません。
地主さんがどうしても借地を返してもらいたい時は、専門家にご相談することを強くおすすめします。
(よい方法が見つかるかも・・・)
- Q.3借地上の建物が火災により焼失した場合や老朽化など物理的な問題が発生した場合、当初締結した借地契約はどうなりますか。地主としてなにか主張できますか。
-
- ■火災、倒壊、取り壊しなどで建物がなくなった場合
-
借地法と借地借家法で異なります。(図1参照)
借地法・借地借家法ともに建物がこの場合でなくなっても借地契約は終了しません。
まず、借地法では建物がなくなった後に借地人さんが借地契約の残存期間を超える建物を再築する場合は、地主さんが遅滞なく異議を述べなければ借地契約が延長されてしまいます。
一方、借地借家法では最初の更新前に残存期間を超える建物を再築を通知された後、
2ヶ月以内に異議を述べなかった場合は期間延長を承諾したものとみなされます。
また、最初の更新後に地主さんの承諾を得ずに残存期間を超える建物を再築した場合は、地主さんから借地契約を終了させる申し入れをすることができます。けれど、この時も借地人さんは裁判所から地主さんの承諾に代わる許可を求めることが可能です。 - ■老朽化などによる朽廃の場合
-
借地法では建物が朽廃すると借地権は消滅するとされています。
(ただし、建物の朽廃を認められるのは難しいですが・・・)
また、残念ですが借地借家法では建物の朽廃によって借地権が消滅するとはされていません。
- Q.4所有地の近くで住宅を建設することになり、所有地を材料置き場に半年間貸してほしいと言われました。このような時、短期間で一時的に土地を貸す方法はありますか。
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「一時使用目的の借地権」というものがあります。
例えば、期間限定のショールームや工事期間に数ヶ月だけ使用する現場事務所(仮設建物)などが考えられます。
しかし、契約の中で期間だけを短く設定するだけでは認められません。期間を短くする目的や経緯を客観的に明らかにすることが重要です。また、たとえ短期間に設定されているとしても、借地人さんがしっかり理解していなければ「普通借地権」となり、30年の借地期間になってしまう場合もあります。
「一時使用目的の借地権」は地主さんにとって予想外のことが起きる可能性がありますので、必ず専門家に相談してから契約を結ぶことをおすすめします。
- Q.5
知人に当初、10年間の約束で住宅の敷地として、所有地を貸しています。その後、最初の10年の期間満了後に何度か期間を更新しています。
しかし、借地契約は10年間を期間として設定することはできないと聞きました。このような場合はどうなるのですか。 -
この場合、借地契約が平成4年8月1日よりも前に締結(借地法)されているか、それとも以降(借地借家法)かによって変わります。(図1参照)
借地法の場合だと最初の契約期間を堅固な建物だと60年以上もしくは非堅固な建物だと30年以上となります。
また、借地借家法の場合だと原則30年以上となります。
したがって、当初の契約期間を10年で定めていても原則期間に修正されてしまうことになります。
契約更新料・更新拒絶
- Q.6現在、借地契約期間中の土地を契約が満了した後に有効活用したいのですが、借地人さんから更新請求されました。更新せずに土地を返してもらうことはできるのでしょうか。
-
地主さんが更新拒絶をして借地を返してもらうには、地主さんから借地人さんへ遅滞なく異議を述べる必要があります。(更新をしない旨の意思表示)
ですが、異議を述べたら借地を返してもらえるかというとそうではなく、その異議に「正当性」が必要になります。「正当性」とは地主さんがどれくらいその土地を必要としているかが問われ、借地人さんの必要性と比較されることになります。それに合わせて財産上の給付(立ち退き料)も加味されて判断されます。
これは、地主さんにとって過酷な現実ですが、地主さんの正当性が簡単に認められることは無いと思われます。
(相当な額の立ち退き料を支払う場合は別ですが・・・)
実際、契約更新のたびに借地人さんが更新を請求し続けると更新せざるえないことになります。ですから「土地を人に貸すと永久に戻ってこない!」と言われているんですね。
ですが、諦めるのは早いです!経験豊富な専門家に相談してみてからでも遅くはないですよ。
- Q.7借地人さんとの契約期間の満了が到来しようとしています。先日、借地人さんから借地契約を更新したいと言われたのですが、更新をせずに借地を返してほしい場合、立ち退き料を支払わなければならないですか。
-
必ずしも、立ち退き料が必要だとは限りません。
地主さんの更新拒絶に正当事由が認められれば立ち退き料を支払わずとも更新拒絶が認められることもあります。(No.6参照)
- Q.8
先日、借地人さんとの契約期間が過ぎているのに気づきました。
このような場合、借地契約は終了しているのですか。 -
借地契約が平成4年8月1日よりも前に締結(借地法)されているか、それとも以降(借地借家法)かによって変わります。(図1参照)
借地契約の中に更新について何も特約がないことを前提としますが、- 【借地法の場合】
-
地主さんから遅滞なく異議を言わず、期間満了後に借地人さんが借地を使用し続けた場合は「法定更新」します。
この場合、堅固な建物であれば30年、非堅固な建物であれば20年となります。 - 【借地借家法の場合】
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これも、「法定更新」となるのですが、1回目の更新は20年、2回目以降の更新は10年となります。
しかし、借地上に建物がある場合でないと「法定更新」は認められません。
地主さんにとっては、本当に過酷な法律ですね・・・
- Q.9借地契約を更新する際に、借地人さんに更新料を請求することはできますか。
-
更新料についてですが、これも承諾料と同じく、法的根拠はなく慣習です。(金銭の授受No.9参照)したがって、法律に則って請求はできません。しかし、借地契約で更新料についてお互いの合意があれば請求できます。
ですが、地主さんからしたら少額の地代で土地を貸し、更新料や承諾料で補填している場合もあるでしょう。このことをしっかり借地人さんに説明する必要がありますよね。
- Q.10借地契約を更新する際に、土地の地代を値上げすることはできますか。
-
土地の税金や地価の増額が相当ある場合は、地代の増額を借地人さんに請求でします。しかし、その額がそのまま認められるというのは難しいと思われます。
(継続賃料となりますので、地代の大幅アップはあまり期待できないかもしれません・・・)
地主さんにとっては大事な収入源ですが、借地人さんにとっては、生活費からの支出ですのでお互いの利益がぶつかることとなります。そこで増額の合意が取れなければ、調停で解決します。それでも合意できなければ裁判でガチンコ勝負です!
裁判が確定するまでの間、借地人さんは地代の支払いについては「相当の額と認める地代」(要は今まで通りの額を払えばよい)となっていますが、地主さんとしては当然受け取ることを拒みますので、借地人さんは法務局に供託することになります。
めでたく裁判で増額が確定した時には、地代の増額を提起した日に遡って、借地人さんから地代の不足分と年1割の利息を加えて頂戴することになります。
また、地代の減額の場合は立場が逆になると考えてよいでしょう。
- Q.11借地人さんとの契約の際に、更新する場合は承諾料を支払う約束で契約しました。このたび、借地契約の期間満了にともない更新することになったのですが、更新料を支払いません。このような場合は、契約違反として契約解除はできますか。
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借地契約で更新料の支払いについて合意されていれば可能性はあります。(金銭の授受No.10参照)
しかし、解除については更新料の支払いについての経緯と地主さんと借地人さんの信頼関係が破壊されているかが問題となりますので、必ず解除が認められるわけではないでしょう。
土地を貸している地主さんからしたら、約束を守らない借地人さんとは縁を切りたいと思うのはおかしくないと思うのですが・・・
契約解除・土地明け渡し
- Q.12地代の滞納による督促や催告に対して、期限内に支払いはなかったのですが、期限後に支払われました。この場合、借地契約は解除できますか。
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まず、借地人さんの地代滞納で契約解除を行うには、相当な期間を定めて借地人さんに地代の支払いをするように催告し、(内容証明がよいです)その期間が過ぎた後に契約を解除する意思表示が必要になります。
今回のケースだと地代の催告の中に「支払期限内に支払わなければ契約を解除する意思表示」があったとすれば、支払期限後に地代の支払いがあったとしても支払期限が来た時点で解除は有効であると考えます。
しかし、地代の支払い催告の中に「支払期限内に支払わなければ契約を解除する意思表示」が無かったとすれば、支払期限後にあらためて契約解除の意思表示をしなければならず、その意思表示の到達前に地代が支払われたのであれば解除はできません。
しかし、相当な期間というのは決められているものではないうえに、支払期限を少し過ぎたぐらいでは、地主さんとの信頼関係を破壊したと認められないこともあるで解除ができない場合もあります。
- Q.13借地契約の期間満了にともない、借地上の建物を更地にして返してもらいたいのですが、借地人さんからはその建物を買い取るよう請求されました。借地人さんに解体・更地での返還を求めることはできますか。また、それができない場合でも、建物の買い取りを拒否することはできますか。
-
これを「建物買取請求権」と言います。
本来なら、借地を更地に戻して返してもらいたいところですが、借地契約の期間満了で更新の無い場合はこの「建物買取請求権」を地主さんが拒否することはできません。ちなみに建物の買取代金は時価とされています。
しかし、これが合意解約の場合は、当然に建物のことまで考慮したうえでの合意ですから「建物買取請求権」は放棄し、建物の収去が前提になると考えます。
- Q.14地代の滞納を理由にした借地契約の解除を行った際、借地上の建物の買い取りを請求されました。買い取らなければいけないのですか。
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ズバリ!買い取る必要はありません!!
「建物買取請求権」(No.13参照)は真っ当な借地人さんに対しての法律で、地主さんとの信頼関係の破壊が認められるような借地人さんにはこの「建物買取請求権」は使えません。
- Q.15地主の承諾なしに、借地人さんが第三者に対して借地権と借地上の建物を譲渡したため、借地契約を解除したのですが、その第三者から借地上の建物の買い取りを請求されました。買い取らなければいけないのですか。
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地主さんには納得いかないことだと思いますが、買い取らなければいけません!
これも「建物買取請求権」(No.13参照)というのですが、地主さんの承諾なしに借地人さんが借地権を第三者に譲渡する場合、地主さんが譲渡に承諾しなければ、その第三者は地主さんに対して建物を買い取るように請求できます。これは拒否することができません!
(本当に腑に落ちませんが・・・)
また、解除についてですが、借地権が地上権(底地のいろはNo.2参照)でない限り、借地権の譲渡には地主さんの承諾が必要です。地主さんに無断で譲渡した場合、それが地主さんと借地人さんの信頼関係を破壊するような内容であれば解除ができます。
- Q.16借地人さんが、地主の承諾を得て転借人さんに土地を転貸したのですが、借地人さんが地代を滞納しています。借地人さんとの借地契約を解除して、転借人さんから土地を返してもらえますか。
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借地人さんの地代滞納が酷く、地主さんとの信頼関係が破壊されて契約解除となった場合は、転借人さんに対して土地の明け渡しを求めることができます。
転借人さんは借地人さんとの転貸借契約で成り立っており、借地人さんは地主さんとの借地契約で成り立っています。
したがって、地主さんと借地人さんとの借地契約が債務不履行で契約解除になった場合は、転借人さんは地主さんに対して土地を占有する権利を主張できなくなるでしょう。
(親亀が転ぶと子亀も転ぶというわけです。)
- Q.17借地人さんが地主の承諾を得て転借人さんに土地を転貸しています。地主と借地人さんが借地契約を合意解除した場合、転借人さんから土地を返してもらえますか。
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結論から申し上げますと、土地の明け渡しは難しいでしょう。
地主さんと借地人さんとの借地契約があるので、借地人さんと転借人さんとの転貸借契約があります。ですので、地主さんと借地人さんの借地契約が無くなれば転貸借契約も無くなると思われるでしょう。(No.16参照)
しかし、これは借地人さんが「債務不履行」などで契約解除となった場合で、地主さんと借地人さんとの「合意解約」の場合には、地主さんは転借人さんに対して土地の明け渡しを求めることはできません。
- Q.18借地権の無断譲渡や無断転貸があった場合、借地契約を解除することはできますか。
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地主さんは自分の土地を他人に貸すわけですから、借地人さんがどんな人なのかを重視しますよね!
よって、借地契約は地主さんと借地人さんとの信頼関係を重んじて契約を締結します。
ですので、このケースの無断譲渡や無断転貸が地主さんとの信頼関係を破壊するようなものであれば契約を解除できます。
しかし、借地権が「賃借権」ではなく「地上権」であれば、借地権の譲渡や転貸に地主さんの承諾は不要です。(底地のいろはNo.2参照)
- Q.19借地人さんが土地を第三者に転貸していることを知っていながら、借地人さんから地代をもらい続けています。地代をもらい続けたことにより、転貸を認めたことになり解除できなくなるのでしょうか。
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たしかに、知っていながら地代をもらい続けると転貸を認めたことになってしまう可能性があります。やはり、契約に違反することがあれば、しっかりと借地人さんに異議を述べなければいけません。
ですが、言うのはたやすいですよね!地主さんからしてみれば、借地人さんに言いにくいこともありますからね!そんな時こそ専門家を使ってみてはいかがですか?
- Q.20 借地契約の内容により、借地に建築することができる建物の種類や構造を制限することはできますか。違反が確認された場合、借地契約を解除することはできますか。
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当然、建物の制限はできます。
そうでなければ、借地人さんは好き勝手に建物を建ててしまうからです。それによって、建物の存続期間や地代、建物買取請求権が行使された場合(No.13参照)の買い取り額などに影響が出ます。ですので、地主さんは契約時に借地人さんが建てる建物の種類、構造については制限することができます。
また、借地人さんが契約上の建物の制限に違反した場合ですが、地主さんと借地人さんの信頼関係が破壊されたと判断されれば解除は認められるでしょう。
- Q.21借地契約で土地の形状を変更を禁止していたにもかかわらず、借地人さんが許可なく土地を掘削し、土地の形状が変更していることがわかりました。借地契約を解除できますか。
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借地契約で禁止していた掘削や形状変更はとんでもない話ですね!
土地の価値を下げてしまうような場合だと地主さんと借地人さんの信頼関係が破壊されたと考えて、解除ができるのではないでしょうか。
しかし、土地の形状の変更には土地の利用価値を高めることもあります。このような場合だと、信頼関係が破壊されたとは考えにくく、解除は難しいと思います。
- Q.22 建物なしで利用するという約束で貸した土地に、建物を建てられてしまったのですが、契約の解除はできますか。また損害賠償は請求できますか。
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このケースですと、そもそも建物を建てない目的で賃貸借契約を締結しているので、借地借家法は適用されません。
また、賃貸借契約に大きく違反していることから、契約解除はできると思われ、損害がある場合は損害賠償もできるでしょう。
- Q.23建物を建築する目的で土地を貸していたのに、借地人さんが空き地のままで使用しています。借地契約を解除できますか。
- 難しいですね!というのも借地人さんが建物を建築せずに駐車場として使用していても、地主さんとの信頼関係を破壊しているとは言いがたいので契約解除とまでは難しいですね。(当然契約違反なんですが・・・)
相続と売却
相続
- Q.1底地を子供に相続させるべきでしょうか。
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一概には言えませんが、底地によって異なると考えます。
例えば、借地で貸している相手が、しっかりとした企業で事業用定期借地権で契約しており、期間満了後には更地で戻ってくることが明確で収益(地代)も上がっているような場合ですと、次に引き継ぐ相続人さんも予想外のトラブルに困るようなことは少ないと思います。
しかし、多くの底地と呼ばれる相続不動産にありがちなことですが、借地の多くが戦前戦後の契約開始で契約書も無く、借地面積も明確になっておらず、現在の借地人さんも相続で引き継いできているので、契約当初のことは全く知らないというようなケースが多くみられます。
このような場合、想定外のトラブルに巻き込まれる可能性が高く、地代自体も安く収益があまり上がっていないので、次に引き継ぐ相続人さんの負担になることがあります。
ですので、このような場合であれば底地を売却し、相続人さんがしっかり家の財産を守っていける形にあらかじめ用意をしておくことをおすすめします。
- Q.2借地人さんが死亡しました。死亡した借地人さんには妻と息子がいますが、借地人さんが死亡したことにより借地契約が終了するのですか。もし、借地契約が終了しないのであれば、今後の地代は誰から受け取ればよいのですか。
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まずは、借地人さんの死亡により借地契約が終了するかどうかですが、借地契約は終了しません。なぜならば借地権は相続できるからです。よって、相続人さんが借地人さんとなるのです。
また、地代の請求先ですが、相続が発生すると遺産分割があります。遺産分割協議が終わるまではすべての相続人さんに請求できます。その後、借地上建物の相続人さんが決定したら、その相続人が新たな借地人さんとなります。
(遺産分割協議書や相続登記後の謄本を確認してくださいね!)
売却
- Q.3底地の売却価格の相場はありますか。
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第三者に売却することを前提としますが、底地は不動産の中でもとても特殊なものです。理由としては、その土地に借地人さんがいるので地主さんは自由に土地を使うことができず、利用方法がとても限定されます。ですので、底地を売却して新たに地主さんになった方も有効利用ができないのが現実です。
底地の売却価格のポイントとしては、底地の地型や周辺環境、接道状況、収益性が重要視されます。
上記から底地の売却価格の相場としては、市場価格の10%~20%ほどになると考えます。(借地人さんに売却する場合は別ですが・・・)
- Q.4底地を売却する場合、どんな方法がありますか。
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底地を売却する方法として大きく分けて二つあります。
一つ目は、借地人さんに売却する方法です。これは、所有する底地に何人の借地人さんがいるか、底地がどのような形をしているかで注意が必要です。
借地人さんに売却する方法のメリットとしては、一番高値で売却できる可能性が高いことです。
しかし、借地人さんの経済状況によっては、購入できない借地人さんもいるでしょうし、借地人さんから購入しないと言われてしまえばそれまでです。そうなった場合、購入する借地人さんと購入しない借地人さんによって残った借地の形がとても悪くなってしまい、どうしようもなくなってしまうことが多々あります。
(借地人さん全員が買ってくれることはまず無いですから、残った借地は虫食い状態で無残です・・・)
また、借地人さんとの売買交渉は大変な労力がかかりますし、測量や分筆を行い借地を個々に確定しなければなりません。
(測量の結果、借地人さんが認識していた借地面積と違っていたら、ここでもトラブルになることも多いです・・・)
ですので途中で挫折される地主さんも多いのが現実です。
二つ目ですが底地全体を現状のまま売却する方法です。この売却先には大抵が底地専門の買い取り業者となります。
デメリットとしては、借地人さんに売却するよりも価格が低くなることが多いです。しかし、借地人さんとのトラブルを避けて面倒がない方法としてはよいでしょう。
(借地が虫食い状態にならないためにも・・・)
- Q.5借地人さんが地主の承諾なしに建物を第三者に売却しました。その第三者は、借地人さんとなるのですか。
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とんでもない話です!
当然、借地人さんにはなりません!
(借地権が地上権でなければですが・・・)
その第三者が借地人さんとなるためには、地主さんの承諾が必要ですから。(契約期間・契約更新・契約解除No.15参照)
- Q.6借地人さんが地主の承諾なしに建物を第三者に売却しました。その第三者に土地を貸さなければならないのですか。
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地主さんの承諾なしに売却しているのだから、貸す必要はありません。
(借地権が地上権でなければですが・・・)
しかし、その第三者から「建物買取請求権」を行使される場合はありますが・・・
(契約期間・契約更新・契約解除No.15参照)
名義・抵当権・禁止事項
名義・登記
- Q.1土地賃貸借契約書に記載されている借地名義人と登記されている建物の登記名義人が違うのですがどうすればよいですか。
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まず初めに考えられることが、相続が発生して建物名義が変更された時です。借地上の建物は相続が発生した場合には地主さんの承諾は必要ありません。
しかし、無断譲渡されていたとしたら大変ですので、借地人さんにしっかりと確かめることをおすすめします。(金銭の授受No.8参照)
- Q.2土地賃貸借契約書に記載されている借地名義人と登記されている建物の登記名義人が違うのですが、借地人さんは借地権を第三者(新たな地主さん)に対抗できますか。
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結論から言いますと、借地人さんはその借地権を第三者に対抗できません。
例えば、借地人さんが建物を息子の名義にして登記していても、地主さんが第三者に底地を売却した場合、借地人さんはその第三者(新たな地主さん)に借地権を主張できないとされています。
担保・抵当権
- Q.3借地上の建物を担保に銀行から借り入れはできますか?
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借地人さんがリフォーム等の資金のために、金融機関の融資を受けることがありますが、
この時『借地権+建物』を担保にすることができます。
しかし、金融機関からの融資条件で、地主さんの承諾を条件にされるケースが多くみられます。また、借地に抵当権が設定されていたりすると、かなり難しいと思われます。
このケースでは多くの課題(借地権が地上権なのか?賃借権なのか?など)がありますので、専門家にご相談されたらよいでしょう。
- Q.4地主の承諾なしに、借地人さんが借地上に所有する建物に抵当権を設定できますか。
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結論から言いますと可能です。
借地上の建物に抵当権を設定する場合に地主さんの承諾は必要ありませんが、抵当権が実行されて、建物を買受人さんが競落した場合は地主さんの承諾が必要です。
また、金融機関が抵当権を設定する場合には融資条件として地主さんの承諾を条件にする場合もあります。
- Q.5借地契約に借地上建物に対しての抵当権設定を禁止する特約はできますか。
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借地借家法では基本的に借地人さんに不利なものは無効とされています。
ですので、抵当権設定は借地人さんの自由となるのですが、一方で「抵当権の設定を禁止する特約は有効である」との判例もあるのです。
結局、この件については裁判所でも見解が分かれているのが現状です。
この特約を記載する場合には、無効になることも考えておく必要があるでしょう。
- Q.6借地人さんが破産しました。借地上建物が競売にかけられた場合、競落した人に土地を貸さなければならないのですか。
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この場合、借地人さんが建物を第三者に売却する時と同じ考え方で、地主さんの承諾が必要です。ですので、地主さんは承諾を拒否してもよいのですが、競落人は地主さんに代わり、裁判所から許可をもらえる申し立てができるようになってます。
ですが、借地上の建物だけを競落する人が多いとは思えませんので、こんな場合は地主さんが競売に参加して競落すると借地が戻ってきますよ♪
(おそらく、落札価格は安いと思います。)
- Q.7抵当権が設定されている土地は、借地として第三者に貸せますか?
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結論は可能です!
しかし、土地の抵当権が借地権よりも先に設定されている場合、万が一、土地に設定されている抵当権が実行されると借地人さんは土地を明け渡すことになりますので、抵当権が設定されている土地に対して土地賃貸借契約を結ぶことは非常にリスクがあることを認識して締結することが大事です。
禁止事項
- Q.8「借地上の建物に対する抵当権設定の禁止」や「借地権や借地上の建物の譲渡の禁止」、「土地の形状変更の禁止」、「建物の種類や構造の制限」、「建物の増改築の禁止」などの特約は有効ですか?
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原則として、借地人さんに不利になる契約は無効になることを踏まえて順番にご説明します。
- 1.借地上建物に抵当権設定の禁止の特約は有効である判例がありますが、無効になる可能性もあり、特約を入れる場合は注意が必要です。(No.5参照)
- 2.借地権の譲渡を禁止する特約を付けることはできます。しかし、借地権の譲渡を禁止する特約を付けたとしても、借地人さんは裁判所に対し借地権の譲渡に関して、地主さんの承諾に代わる許可を求めることはできます。
- 3.土地の形状変更の禁止は当然できます。貸した土地の価値を下げられては困りますよね!
- 4.建物増改築禁止の特約も当然できますよ!しかし、これも借地人さんは裁判所に対し増改築に関して、地主さんの承諾に代わる許可を求めることはできます。
- Q.9借地契約の中で借地人さんが、借地上に所有する建物を第三者に賃貸することを禁止する特約は有効ですか。
- 借地上の建物は、借地人さんの所有する建物であり地主さんの物ではありません。よって、借地人さんの所有建物を第三者に貸すことは借地人さんの自由です。ですから、この特約は無効と判断されるのではないでしょうか。しかし、自分の土地を全く知らない人に使われるのは心配ですよね!
- Q.10現在、借地人さんが借地上に木造二階建ての建物を建てて住んでいますが、この木造建物を鉄筋コンクリート三階建てに建て替えようとしています。どのように対応すればよいですか。
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まず初めに、借地契約の中に建物の用途や制限等を取り決めているかを確かめてください。もし入っていなければ拒むことは難しいでしょう。
逆に、取り決めをしているのであれば契約違反です。
借地人さんは建て替えを行うには地主さんの承諾が必要になりますので、用途や制限等の変更も同時に申し入れてくることになると思われます。また、木造建物から鉄筋コンクリートの建物になるわけですから借地契約の残存期間にも気を付けてください。
承諾をする場合にしろ、しない場合にしろ、あらかじめ専門家にご相談されてから対応されることをおすすめします。
- Q.11借地人さんが地主の承諾なしに借地上の建物の増改築をしようとしています。また、借地人さんから増改築の承諾を求められた場合にはどのような対応をすればよいですか。
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まず初めに、借地契約を確認しましょう。
借地契約の中に「増改築禁止特約」または「増改築をする場合は地主の承諾が必要」との記載はありませんか?もし、ある場合ならば、借地人さんは地主さんの承諾が必要になります。(もしなければ、残念ですが地主さんの承諾はいりません・・・)
記載が有りながら、借地人さんが無断で増改築を行ったことが原因で、地主さんと借地人さんとの信頼関係が破壊されたのであれば借地契約を解除できます。
また、借地人さんから増改築の承諾を求められた場合ですが、しっかりと協議して場合によっては承諾料を求めてもよいのではないでしょうか。
(金銭の授受No.3、No.9参照)