借家の基礎知識 - 賃貸借契約とは
賃貸借契約とは
賃貸借契約とは、対価の授受を伴って物の借り貸しをすることです。
当事者の一方(貸し手)が、相手方(借り手)に使用および収益をさせることを約し、使用の対価として借り手が貸し手に賃料を支払う契約のことです。
例えば、アパートの持ち主である家主さんが部屋を貸し、その対価として借主さんが家主さんに家賃を支払う契約や、土地の所有者である地主さんがその土地を貸し、その対価として借地人さんが地主さんに地代を支払う契約のことです。
建物の貸し手を「家主」、「大家」、「貸主」、「賃貸人」、土地の貸し手を「地主」、「土地所有者」「借地権設定者」ということもあります。
建物の借り手を「借主」、「借家人」、「賃借人」、土地の借り手を「借地人」、「賃借人」、「借地権者」ということもあります。
賃貸人(貸し手)の義務
賃貸人は賃料を支払ってもらう権利があります。しかし、その反面さまざまな法的義務を負うことにもなります。賃貸借契約における賃貸人の基本的義務としては、目的物を使用収益させる義務、目的物の修繕義務、費用償還義務などが挙げられます。
- ・目的物を使用収益させる義務
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賃貸人は、賃貸借契約に基づき、目的物を賃借人に引き渡し使用収益させる義務があります。
また、賃貸借契約は、書面がなく口頭だけでも成立します。 - ・目的物の修繕義務
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賃貸人は目的物を使用収益させる義務を負っているため、目的物が使用収益できるために状態を整える義務があります。
例えば、目的物が壊れている場合などは、修繕する義務を負うことになります。 - ・費用償還義務
- 前述の通り、賃貸人には、修繕義務があります。ですが、必ずしも賃貸人が修繕できる状態であるとは限りません。場合によっては賃借人が修繕することもあります。その際の修繕費用を、賃貸人は賃借人に償還する義務があります。
なお、これらの修繕義務や費用償還義務については、賃貸人と賃借人のいずれがどこまで責任を負うか、費用を負担するかなどの対応の範囲については、契約における特約で定めることができると解されています。ただし、口頭で賃貸借契約を締結していた場合は、それらの取り決めがあいまいな場合が多いため、トラブルが多発しています。
賃借人(借り手)の義務
賃借人は目的物を使用する権利がありますが、賃料を支払うなどの義務も当然あります。
- ・賃料支払義務
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賃貸借契約は、「対価を支払って使用収益する」ことですので、賃料を支払う必要があります。
一般的にいう「家賃」や「地代」です。 - ・善管注意義務
- 賃借人は、目的物を使用する権利はありますが、どのように使ってもいいというものではなく、一般的・客観的に要求される程度の注意をもって管理しなければならないという義務を負います。
- ・目的の範囲内での使用
- 賃借人は、賃貸借契約または目的物の性質によって定められた用法に従って、目的物を使用しなければなりません。
- ・目的物返還義務/原状回復義務
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賃貸借契約が終了した時には、賃借人は目的物を返還する義務を当然に負います。
その際、目的物を原状回復させてから賃貸人に返還する義務を負っています。
これを「原状回復義務」といいます。
これらの権利、義務については、賃借人が義務を履行しないからといって、一方的に契約を解除できるものではありません。
「その義務違反が賃貸人に対する信頼関係を破壊する恐れがあると認めるに足りない特段の事情がある場合には、解除を認めない」というのが裁判所の判例です。
つまり、かなりひどい義務違反が相当の期間続く場合に限り契約が解除できるということです。