借家の基礎知識 - 相続時の問題点
節税対策としてのアパート経営
一昔前、相続税対策のためにアパート経営が流行りました。
現金で資産を保有するのに比べ、それを土地や建物に換えれば、相続財産の評価額が3割ほど低くなります。また賃貸に出せば、そこからさらに2~3割下げることができるのです。
しかし本当にこれらは節税対策になるのでしょうか。
ここ数年は核家族化が進み、独身人口も多くなっている影響で総世帯数は増えています。ですが、国立社会保障・人口問題研究所等の推計によると、2020年をピークに総世帯数は減少し始めます。世帯数が減るということは、借り手が減ると考えられます。
その反面、上記で述べた節税対策を狙ったアパート建築が急増し、今もなお増え続けています。
増え続けるアパートに対して、減少する総世帯数。
駅近で立地条件が良く、競争力が高い一部のアパートに、交通の便が悪く住宅設備も充実していないアパートは淘汰されていくでしょう。
確かに、いっときのことを考えるとアパート経営は節税対策になります。
ですが、将来空き室が多くなったり、アパートを建築するためにローンを組み、借金が残ったりすることを考えると必ずしもメリットだけではないことがわかりますよね。
また、不動産としての「資産価値」という点でも、アパート付きの土地は、不動産としての資産価値である「時価」が大きく下がってしまう場合が多いのです。
このようなことから、節税対策としてのアパート経営については、メリットとデメリットをよく考え、専門家に相談しながら判断することをおすすめします。
アパート・借家・マンションの資産活用
上記で述べたように、相続税対策として今もなおアパートやマンションが新たに建築されています。
これから減少する世帯数に対して、物件が供給過多になることは容易に想像できます。
では、今すでにアパート・借家やマンションを所有している場合はどうでしょう。
建替や大規模リフォームで稼動率アップ
世間では、マンションやアパートがどんどん建築されているわけですから、老朽化したアパートや借家は空室率が高まるばかりです。
もちろん建替や大規模リフォームなどをしていけば新築とそれほど変わらない稼働率で経営していくことも可能ですが、いずれにしても新たに資金を調達して投資をする必要があるのが現状です。
売却
また、資産活用としては、売却する方法もあります。
一番価格メリットが高いのは、建物を解体して更地で土地を売却する方法です。
ですが、この場合は既存の入居者の立ち退きという大きな障害が明らかです。
先に述べた大規模リフォームや建替をする場合にも、既存の入居者の一時退去が欠かせません。
入居者の立ち退き要請は、長年にわたるお付き合いや、入居者が高齢の場合など、なかなか積極的に行うことができない場合があります。
その場合は、入居者付きで土地建物を売却する方法もあります。
アパート・借家の遺産相続
土地やアパート・借家は、先祖から代々受け継いだものや、一生懸命働いて手に入れた思い入れのあるものですよね。
そんな土地やアパート・借家は、手放すことに抵抗を感じたり、自分の家族に残してあげたいと思ったりするのも当然です。
ですが、固定資産税や修繕費、管理費。空室率が高ければこれらの費用をまかなうこともままなりません。
老朽化したアパートや借家に関しては、資金を調達して改修するか、売却しなければ、ただの金食い虫になりかねないのです。
また、相続時には争いの種にもなりえます。
相続する子供が1人であれば特に問題はないでしょう。子供が2人、3人となればどうでしょう。
親の想いとしては、全員で均等に分けてもらいたいと願いますが、土地や建物は物理的に分割できない場合は持分共有することになります。持分共有の場合は以下のような問題点があり、いままで仲良かった兄弟が争う仲になることがよくあります。
- 【持分共有の問題点】
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- ・現金化の際は全員が同意する必要がある
- ・共有している建物の大規模改修等で借入を起こす際は全員が担保提供者や連帯保証人となる必要がある
- ・相続を繰り返し、相続人が増えていく可能性がある
- ・共有名義の場合は持分に応じ費用負担が必要となる
また、各相続人に相続が発生し共有持分が相続され続けると、ねずみ算的に共有者が増えることとなり、共有者同士が遠縁のまた遠縁になるケースもよく見られます。こうなると最悪の状態の一歩手前です。
これらのことを踏まえ、今あるアパート・借家をどうするか考えていく必要がありますね。
また、ご自身が相続する立場でも、あらかじめ被相続人とよく話し合い、備えておくことが大切です。