底地の基礎知識 - 底地の問題点と解決方法

地主さんが抱える問題点

①貸したまま、返ってこない借地

土地を長年貸し続けている地主さんはたくさんいます。中には、本当は貸したくはないのにやむをえず貸しているといったケースも多いでしょう。
旧借地法は、大正10年に制定されました。この法律は、(当時の状況もあり)借地人さんの権利保護に重点が置かれており、非常に強力な権利を発生させます。
そのため、地主さんから契約解除を行うことがほとんど認められません。借地人さんからの申し出がない限り、契約期間がいつまでも続いてしまっている現状です。また、借地人さんの相続が発生しても借地権は当然に相続されますので、自分の土地であってもいつまでも自分で活用できません。

②売却が困難

底地の売買は非常に限定的です。一般人が底地を購入することは非常に稀有であり、購入するのは借地人さんもしくは底地買い取り専門の不動産業者くらいに限られるといってよいでしょう。
底地には借地人さんが建物(借地権)を所有しており、そのため地主さんは土地を自由に利用することができません。またその地代も安く設定されていることが多く、納得できる収益を得ることができないために資産としては不良資産と言わざるを得ず、もちろん需要もありません。
借地人さんが底地を購入するケースもあるのですが、その時期について予測を立てることは困難であり借地人さんの経済状況を把握しないと地主さんの都合で処分することは難しいでしょう。
底地買い取り業者が底地を買い取る時の相場感は更地価格のおよそ10%~15%程度です。相続時には評価割合が更地価格の40%程度(住宅地の場合)ですが、底地買い取り業者はそれよりも安く買わないと事業になりません。それほどに借地権は強力なのです。

③事業性の価値が低く、収益性が高くない

底地を事業としてとらえると、あまり価値の高いものとはいえないでしょう。
土地にかかる税金や諸経費を考慮して地代を設定をしていれば、原則マイナス収益になることはありません。
ですが、利回りを計算してみると収益性が高いとはなかなかいえないのです。
(時代に合わせて地代の値上げをしていればですが・・・。)
借地は当然、安定的な地代収入を見込めます。しかし、土地価格からの収益性を考えると地代収入が低い水準にとどまることが多く、別途固定資産税や相続税などの費用も発生することからさらに収益は低くなってしまいます。

④借地人さんとの間にトラブルが起こりやすい

地主さんと借地人さんの間ではトラブルはつきものです。実際の例をいくつかご紹介しましょう。

□地代改定の交渉で口論になってしまった!
税金の増減など、時代背景に伴い地代の適正価格は変化するものです。税率の上昇などにより必要な支出が増えてしまった場合、当然地代の改訂を行う必要があります。
借地人さんがあっさり改定に応じてくれればよいのですが、そうはならず逆に口論に発展してしまうケースもあります。
地主さんと借地人さんの関係は、長い付き合いになりますので関係の悪化を懸念した地主さんが泣き寝入りしてしまうケースも少なくはありません。
借地人さんとの交渉が困難な場合は、第三者の仲介人を配置するのがよいでしょう。
□用法違反に該当する建て替え工事を無断でされた!
借地人さんが、契約で定められた用法の範囲内で建物を増改築することは原則自由です。
(無断増改築禁止の特約がある場合など例外はあります)
逆に用法違反があった場合、地主さんはただちに契約を解除し、土地の明け渡しを求めることができます。
例えば、契約当初の利用目的と異なる建て替え工事を行う場合や、非堅固建物(木造建築物等)から堅固建物(コンクリート建築物など)への建て替えなどを行う場合は、必ず地主さんに相談し、必要があれば契約内容を変更しなければなりません。
こういったケースでは契約の解除となり、明け渡しを求めることができるのですが、ここでもトラブルに発展することが多々あります。
実際、契約時期がかなり昔である場合などは契約内容が不明確で、地主さんと借地人さんの認識にずれがあることもよくあることです。
また、借地権が相続され、契約内容をあまり理解していない新たな借地人さんとの交渉となるケースもあります。
こういった場合、地主さんと借地人さんの見解が異なりトラブルへと発展してしまうのです。

底地のお悩み・問題 解決方法

底地をお持ちの地主さん、借地人さんとトラブルやその底地を今後どのように活用していくかなど、さまざまな悩みがたくさんありますよね。
地主さんが実施できる策はいくつかあります。

A:底地の明け渡しを要求する
用途と異なる建て替えや、地代の滞納が発生している場合に明け渡し要求を行うことができます。
B:借地人さんに地代の値上げを交渉する
相場より地代が安く地代収入を増やしたいとお考えの場合は借地人さんに交渉してみるのも手です。
C:借地人さんから借地権を買い取る
十分に資金調達を実施できる場合、借地権を買い取ることも考えられます。
借地人さんの転居や建て替えを考えているときなどが交渉のチャンスです。
D:底地と借地権を交換する
借地人さんが建て替えを検討している場合などは、敷地面積を分割し、底地と賃借権との交換が考えられます。このやり方だと土地が二分されたうえでそれぞれの土地と建物の所有者が統一されます。
ただし、敷地面積に交換する余裕がある場合に限られます。
E:借地人さんに底地を売却する
将来の相続を考えると、底地を換金してしまうのも一手です。ただし借地人さんとの交渉ができる場合に有効です。
F:底地と借地権の共同で売却する
借地人さんが転居を考えている場合など、底地と借地権をセットで売却することができればかなり有利です。ただしその際の交渉を借地人さんとしっかり行えることが前提です。
Z:底地を業者に売却する
一番手っ取り早く底地を手放すことができる方法です。わずらわしさから解放されたい時や、早急に換金したいとお考えの地主さんにおすすめです。

いずれにしても、なにもわからないまま闇雲に進めてもうまくいきません。交渉が暗礁に乗り上げてしまっては意味がありませんので、必ず行動する前には専門家に相談してください。

底地の売却は地主さんと借地人さんの共同作業

地主さんとしては、低収入にしかならない底地は機会があれば換金したいと考えるのも当然です。
手慣れていない方にとって、不動産管理はやっかいなものですし、相続を考えると早々に処分してしまいたいと思うのも納得です。
相続税の準備資金が厳しく、さらに何らかの事情で物納が難しいとなれば換金するよりほかに手がありません。

一方、借地人さん側でも借地権(借地上の建物)の処分に困っているケースが多々あります。両親から借地上の建物を相続したものの、自分はすでに別の自宅を所有しているケースなどはよくあります。
居住する人がいなくても、借地であるかぎり、地代の負担は発生します。建物が新しければ賃貸に出す方法もありますが、古家であればそれも難しいでしょう。
では更地にして駐車場などにしては?と思うかもしれません。しかし建物がなくなると借地権も消滅することになるので、その場合は賃貸借契約を解除され、地主さんから明け渡しを求められてしまいます。
そもそも借地借家法は建物の所有を目的とする借地権に対して保護すると定められており、建物をなくしてしまうことでその保護を受けることができなくなってしまうのです。
つまり、使用しない借地上の建物は(当然ですが)売却を考えるべきでしょう。

こういった事情から、底地や借地上の建物を売りたいと考える地主さん、借地人さんは多いのですが、実際に売却を進めるにあたっては大きな問題があります。

それは、底地、借地権のどちらか一方ではその価値が低くなってしまうということです。

相続時の評価額は更地評価額に借地権割合をかけた額が算出されます。しかしこれは相続財産の評価額であり実際の市場価格とは大きく異なります。
実際、借地権付きの建物のみを売却する場合は二束三文になることが多く、また地主さんへの譲渡承諾料(名義書換料)も発生します。

また、地主さんが底地だけを売ろうとしても一般の購入者はまず現れないでしょう。また底地買い取り専門の不動産業者が購入する場合は、底地の借地権割合よりかなり低い価格になってしまいます。更地評価額に底地の借地権割合をかけた額の10%~15%程度が実勢価格のようです。

このように、借地権や底地のみ単体で売却しようとしても、その実勢価格は更地評価額に割合をかけた額よりも大きく減少してしまいます。ところが、地主さんと借地人さんが互いに協力し合えば「底地+借地権=所有権」とすることができ、こうすることで更地評価額の満額評価を得ることができます。
そのうえで売却することができれば、地主さんと借地人さんそれぞれに大きなメリットがあるでしょう。

ただし、これはタイミングとそれまでの関係によってうまくことが進んだケースであり、実際は借地人さんとの交渉はうまくいかないことが多いというのも事実です。いったん交渉が決裂、その後関係はどんどん悪化してしまいまともな会話すらままならないといったことになってしまうと、もはや売却など夢物語となるでしょう。
(今までは借地人さんとの関係も良好だったとしても、お金の話になると話は別です・・・。)

このように、底地の売却は地主さんと借地人さんの共同作業です。
ですが、地主さんと借地人さんの意識のギャップが意外とあり、地主さんが思っていたように進まないケースが多くあります。地主さんの方で慎重に話を進める必要がありますが、それでも交渉が揉めてしまうケースが多く、いったん揉めてしまうと、最終的には誰も買ってくれない土地となり、地主さんが困ってしまうことがよくあります。

そうなる前に、専門家の話を聞いてみてはいかがでしょうか。

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